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【イベント名】2009年大学院留学を目指す方のための奨学金獲得セミナー
【開催日時】 2008 年 5 月 23 日(金) 19:30〜21:00
【会場】 アゴス・ジャパン
【イベント概要】
奨学金獲得と体験談から学ぶ、国内奨学金獲得のコツと大学院出願準備成功の秘訣

去る5月23日、当校アゴス・ジャパンの受講生で、見事、フルブライト奨学金を授与され、UC Berkeley Graduate School of Journalismへ今年入学される方をお招きし、出願準備成功の秘訣について、語っていただきました。

まずは、奨学金についての基礎知識や準備項目・スケジュールについて、当校コンサルタントの佐取からの説明後、三重氏の体験談が始まりました。 下記体験談の抜粋。

■自己紹介
TBS報道局のNews23や外信部で7年間、同時多発テロ直後の取材や、911テロ後の国際報道特番の制作にかかわりました。2005年からは約半年間、ワシントンDC特派員を経験。現在は、NHKワールドのニュース番組、「Asia Seven Days」のディレクターをしています。

■大学院を目指したきっかけ
「一言で言えば、機が熟したということ」もともと、留学経験もあり、英文メディアで働きたいという気持ちがあったので、アメリカのジャーナリズムスクールという選択肢は、就職直後からありました。しかし、そこで何を学ぶのか、ということが6年間は明確にありませんでした。しかし、7年働いて真剣に自分のキャリアを考えた際に、これ以上自分のキャリアをTBSでは伸ばすことができないと感じていました。また、それと同時に、テレビ、活字というメディアの垣根に限界を感じ、もっと違った形のメディアのあり方を模索したいと考えました。アメリカのジャーナリズム産業は、日本の10年先を言っているといわれています。こうしたことから、ジャーナリズムスクールで英文記者としての技術、また、ニューメディアを学び、次のキャリアにつなげていきたいと考えました。

■奨学金を目指したきっかけ 
フルブライトのポスターがTBSに張ってあったため、フルブライトの存在は就職直後から知っていました。また、社会人に給付される奨学金が少ないことから、社会人でも応募でき、なるべく、支給額の多い奨学金をインターネットで検索しました。フルブライト奨学金にはジャーナリスト向けのジャーナリズムプログラム奨学金もあり、名誉ある奨学金であることは知っていたので、応募することにしました。結局受けたのは、ロータリー、フルブライト、CWAJでした。

■準備プロセスについて 

2006年10月〜12月:情報収集と留学目的の明確化
USCのAnnenberg School of Journalism に留学中の友人を訪問。そして、USC, Berkeley, Northwestern, NYU, ColumbiaのInformation Session に参加し、教授と面談 アゴス・ジャパン(当時はPRINCETON REVIEW)のFuture Vision Workshopに参加。

2007年1月:テスト対策と書類作成開始
TOEFL(R)TESTを受験し、103点取得。 ロータリー、フルブライトの奨学金申請書類作成に必要な棚卸しを開始。

2007年3月〜2008年1月: 書類提出&面接開始

2007年5月: ロータリー書類提出、フルブライトの登録書提出
ロータリーは、最終面接で不合格。ロータリーは、アメリカ以外にも派遣されることが前提ですが、アメリカ以外の大学への興味をうまく打ち出せなかったことが原因かもしれません。

2007年8月末〜9月:CWAJ書類提出。フルブライト面接。

2007年12初旬:フルブライト合格通知。CWAJ面接。

2007年12月第3週:CWA合格通知。GRE(R)TEST受験

2008年1月 大学院出願 

■テスト対策 書類、インタビューの準備、その他の準備で印象に残っていること、苦労したことなど、いま振り返ってみて、奨学金合格の秘訣とは、何であったと思いますか?

私が今回の受験を通して感じたことは、アメリカの大学院や、フルブライトなどの奨学金は、学業が優秀ということや、テストスコアの高さだけでは、受からないということです。具体的には、目標がきちんとあり、論理立てて、これからの経験も踏まえ、大学院で学ぶ必要性をいかに伝えられるか、ということだと思います。私が特に気をつけたのは下記のことです。

1.情報収集: J-school受験の特殊性を考慮した情報収集
日本人がJ-schoolを受験するのはかなり特殊なことです。体験談などもあまりないし、ランキングなども、12年前のものなので、あまり参考にならず、何を指標にすればよいのか、困りました。先にお話ししましたが、学校訪問を行い、USC のJournalism に留学していた友人などから直接情報収集するように心がけました。

2.自分の業績を評価することの難しさ: 報道記者としての業績評価の工夫
一般企業と違って、報道記者にはこれだけ売り上げたなどの実績は無く曖昧です。特にロータリーの書類作成にあたっては、コンサルタントの佐取さんと、これまで自分のキャリア選択の理由付け、さらに、その一貫性を探す作業を何度も繰り返しました。それが、後のフルブライトの書類作成にかなり活かされました。また、ロータリー、フルブライト、CWAJで求められるエッセイの内容は、大学院出願のものと似ているので、大学院のエッセイでもかなり役に立ちました。

3.ジャーナリズムプログラムか、大学院プログラムか: 自分にとっての最適なプログラム選択
フルブライトには、ジャーナリズムプログラムと、大学院プログラムがあります。私は、記者という職業柄、ジャーナリズムプログラムでも受けることはできましたし、こちらのほうが、実は、受かりやすい、という話も聞いていました。しかし、ジャーナリズムプログラムは、あくまでも研究員という立場なので、学位習得を目的としていません。かなり迷った結果、今後のキャリアも考え、私は、大学院プログラムで受験しました。ただ、なぜ、大学院プログラムなのか、ということも面接で聞かれると思ったので、ただ単に「学位がほしいから」では終わらないように、「J-school(9ヶ月)では期間が足りない」という回答を用意しました。

4.フューチャービジョン: 専門性を持ち、オリジナルであること
振り返ってみると、合格の大きな理由は、これまでの経験とフューチャービジョンが一貫していたということだと思います。書類作成や、面接では、ビジョンを達成するために具体的な方策として、これまでの経歴を踏まえ、アメリカの大学院に留学することが必要だ、ということを明確にしましました。また、この際に必要となってくる専門の話も、知り合いのイギリス人ジャーナリストに何度も内容を見てもらい、整合性があるかどうか、内容に間違いがないかどうか、気をつけました。

5.エッセイ: フルブライトの理念を理解した上で理念に沿って作成
フルブライトは、ただ、学位がほしい、アメリカで勉強したい、ということでは受かりません。また、今回の私のJ-school留学の目的は、英文記者として活躍できる取材力、文章力の構築、次世代メディア(ニューメディアの活用など)の技術習得ですが、これらを直接書いても、フルブライトは合格できません。なぜなら、フルブライトでは、技術を習得するということを目的とした留学は奨励されていないからです。研究の目的で、日米両国の公共の利益ためにつなげていくことができる人物かどうか、という部分が重要視されます。私はたまたま、フルブライターの友人がいたので、彼女に、フルブライトの活動などを聞くなどして、自分の研究目的と、フルブライトの理念のすりあわせをしていきました。自分のフューチャービジョンから大幅にぶれずに、技術色を薄めてエッセイを書くというのが、苦労しました。

6.インタビュー: パッションを伝えることの重要性、専門の熟知度
書類が通ったら、後は、インタビューで論理的に、また、自分がどうしてもアメリカで勉強したいというパッションをいかに伝えきれるか、ということにかかっています。実は、フルブライトに受かった後に知ったことですが、私が推薦状を書いていただいた大学の恩師は、昔、フルブライトの選考プロセスにかかわったことがあったそうです。その恩師が言っていたことは、「結局は、面白い、と思わせること、そして、この人にならお金をあげて、応援したいと思わせることがコツ」だということです。面接では、自分のパッションを思いっきりぶつけました。それが受け入れられたのだと思います。 また、フルブライトの面接官は、その分野のエキスパートです。当たり前ですが、その専門分野について、絶対につつかれると、思ったところは、完全に答えられるように、用意していったほうが良いと思います。

■その後の大学院への出願書類作成について

事前の学校訪問、プログラムの内容の熟知、複数の卒業生からの情報収集の3つが重要だと思います。これは、どこを受けるのかという選択と、どこに行くのかという選択においても、とても役立ちました。

1.学校訪問 
私は、まず、2006年11月に、自分のモチベーションを高めるためにも、学校訪問をしました。行ったのは、USC, Berkeley, Northwestern, NYU, Columbia.そのときの印象では、Columbiaが一番、Northwesternが2番、Berkeleyは3番でした。正直に言ってしまえば、進学を決めたBerkeleyは、当初はあまり良い印象を持っていませんでした。州立大学ということもあり、施設は古く、あまりきれいでもありませんでしたし、Informationセッションなどに力をいれていないような印象がありました。ただ、実際に学校の様子を見て、教授や在校生と話をするということは、ウェブ上で得られる情報以上のものですし、Applicationで「なぜ、その学校なのか」ということを書くときに、一遍とおりでない、オリジナルなことを書くこともでき、ほかの生徒との差別化にもなります。

2.プログラムの内容の熟知
学校訪問の際に最悪だったBerkeleyの印象ですが、Application を書き進めるにつれ、良い方に変わってきました。 理由の1つとしては、”Media War”というアメリカPBSの番組で、私がとても面白いと思っていたものが、実は、BerkeleyのJ-schoolと共同で制作されたものだったこと。また、自分が力を入れたいと思っているInternational Reportingで、ワシントンポストやニューヨークタイムズで海外特派員を経験した記者が教えていること、また、通常、J-schoolは1年ですが、Berkeleyは2年であったこと、さらに、プログラムが多種多彩だったということです。

3.複数の卒業生からの情報収集
出願結果は、自分が思った以上でした。本気で、どこも受からないと思っていたので、これだけ多くの大学院から合格通知をいただいたのはとても嬉しいことでしたが、今度は、どこに行くかについて、決めるのに苦労しました。私が、重視したのは、プログラム、教授のバックグラウンド、学校のなじみやすさです。Berkeleyは、Admission Officeから直接電話で合格通知をしてくれたこと、さらに、こちらからアクセスしなくても、すぐに、在校生からメールが来て、いろいろな質問を受け付けてくれたこと。Admission Officeへのメールに対する返事が迅速、且つ丁寧であったことが、アットホームで面倒見のいい学校だな、という印象につながりました。また、Berkeleyは卒業生による面接もあったので、その卒業生や、在校生と話した結果、BerkeleyのプログラムはとてもFlexibleだという印象を受けました。 ジャーナリズムは、活字、ニューメディア、ブロードキャスティング、ドキュメンタリーなど、さまざまな専攻があり、大体の学校は、Applicationの際に、専攻を決めなくてはなりません。しかし、Berkeleyは、2年目で決めればいいこと。また、多くの生徒の中に埋もれてしまうのではないかと、心配もありましたが、Berkeleyは他の学校に比べ、1学年50人と少人数制であること。(他の学校は大体100人から200人とるようなので、それに比べれば少人数制です。)また、OBが自分の描くようなキャリアに進んでいることも、Berkeleyを選んだ理由の大きな1つです。

■大学院出願用のエッセイについて、奨学金申請のものと比べて、何が違い(同じ部分も含め)、何に気をつけて準備を進めましたか?

骨子は変わりませんでしたが、フルブライトの時よりは、メディア論的な部分を排し、 (なぜなら、J-schoolは、技術中心なため)英文記者のライティング術、ニューメディアの技術を学びたい、というエッセイに仕上げました。

■大学院出願において、印象に残っていること、苦労したことなどありましたらお教えください。

1.モチベーションを保つということ
まず、学校訪問をしたUSCでは、教授から、「J-schoolには、留学生がいないし、USCには日本人が来たこともない。Nativeを対象とした授業なので、大体の留学生は途中で挫折する。君もそうなるんじゃないの?と一蹴されたのを覚えています。のっけからのパンチにショックを受け、本気で、J-schoolに行く必要があるのか、卒業することができるのか、ということを何度も考えさせられ、大学院を訪問している間は何度も悩みました。また、目標を見つけた後も、強い目的意識を保ち続けるのは大変です。なぜなら、奨学金申請準備から、大学院合格まではおよそ1年半かかり、その間に、私生活や会社でさまざまな変化もあるからです。私の場合、2007年の10月に転職したばかりだったので、ここで留学をすべきではない、という気持ちもありました。また、自費での留学は経済的な理由から無理だったことから、フルブライトの合格通知が来るまでは、大学院をあきらめ、準備も全くしていませんでした。 そのため、フルブライトの合格通知が出たときは、信じられないような気持ちの一方、大きなプレッシャーでした。また、その少し前に、母が 入院してしまったため、一度は大学院受験を断念しました。励ましもあり、出願をすることにしたものの、時間がない、看病で準備に集中できない、母の病状の 悪化と自分の焦り、という3重苦の中で、他の人の迷惑にならないように看病の合間を縫って、病院でこっそりエッセイを書くのは、かなりきつかったです。また、GREも受験していなかったので、エッセイ、GREの時間配分も苦労しました。

2.スケジュール管理と学校のRequirement把握
J-schoolではVerbalの平均点が大体600点だったことから、特に、Verbalに力を入れ、短い準備期間の中、Verbal 550, Math 670でという成績でした。また、TOEFL(R)TESTも、一回受けたきりでそのままになってしまい、、(というのは、アシきり点数というものが存在することをすっかり忘れていました。)アシきり点数に満たない学校もありました。特に、USCに関しては、教授から電話を頂き、「なぜ、TOEFL(R)TESTの点数が低いのか」と、そのまま電話で面接をさせられたのを覚えています。合格通知はいただいたものの、つくづく、USCとは相性が悪いんだと思いました。ですので、スケジュール管理と、学校のRequirementをきちんと把握しておくことは重要です。

■振り返ってみて、奨学金申請をしていたことが、大学院出願において、どのようなメリットがあったと感じているか?

1.金銭的保証
アメリカの大学院では、留学生に対して、きちんと学費が支払えるかどうかという経済力の証明をさせられます。フルブライトは、それを保障してくれるので、まず、そこの部分がクリアできます。また、フルブライトは、一年目の学費、生活費は全支給なので、自分の経済力に制約されずに、大学院を選ぶことができます。たとえば、私が受けたNorthwesternは、1年のプログラムですが、7万ドル。Berkeleyの場合は、4万8000ドルと、かなり差がありますが、どちらを選んでもいいわけです。

2.身元保証
アメリカではフルブライトと言えば、知らない人がいないほど、名誉ある奨学金です。フルブライターであるということが一つの推薦状でもありますし、大学側も、フルブライターが学んでいるということ自体で、宣伝にもなるため、なるべくフルブライターをとりたいと考えているようです。私の場合、合格校の1つであるAmerican U.は特に熱心で、1年間の学費が免除されたほか、通常1年の過程を半年延ばしてもいいだとか、その際、半年分の学費の25%免除もオファーされました。

3.Statement of Purposeの一つの指標
フルブライトでは、自分が希望する専門の元フルブライターの現役OB, OGが、書類、面接と審査するので、選考はとても厳しいです。しかし、その選考を通るということは、いわば、自分の研究目的が妥当であるということを裏付けることにもなり、その後の大学院出願書類もゼロから構築するよりスムーズにいきます。私が、11月の末から9校分のエッセイや、ワークサンプルの準備を何とか間に合わせることができたのは、出願準備でもなんとか、奨学金申請の際に書いたエッセイがあったからだと思います。

■秋から進学する大学院に期待していることと、これから奨学金を目指す方へのメッセージ

期待というより、不安がいっぱいです。もともと、書く事を得意とするNative Speakerの中で、自分がどれだけやっていけるかどうか。企業派遣ではないので、帰ってきて職があるかどうか。でも、不安がいっぱいだからこそ、2年間、本気で勉強もできると思います。これから、留学される方、奨学金を目指す方、「きっと自分は駄目だ」と思わないでください。私も、まさか受かるとは思っていませんでした。 宝くじも買わなければあたりません。たとえ、フルブライトやほかの奨学金に落ちたとしても、その努力は、大学院のエッセイで報われますし、大学院から奨学金をもらう、という道もあるかと思います。 アメリカの大学院もフルブライトも、ダイアの原石(可能性)がある人は、とことん応援してくれます。迷ってしまうと、前に進めないので、自分を信じてがんばってください。


三重 綾子 氏
業種:テレビ局
取得奨学金:フルブライト奨学金、CWAJ海外留学奨学金
入学校:UC Berkeley, Graduate School of Journalism, Class of 2010
専攻:ジャーナリズム

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